4)どんな病気で酸素が必要になるのか?


酸素が必要な病気はたくさんありここに網羅しても意味がないと思います。ここでは私たちが日頃よく見かける呼吸不全の原因となる病気についてのみ、みてゆきます。順番はだいたい在宅酸素療法を施行している患者さんの数の多い方から書いています。それぞれの疾患についての記載は簡単です。いつか機会があれば、より詳細な内容のところにに飛べるようにしたいと考えています。

1)COPD(慢性閉塞性肺疾患)・・・簡単に言うと有害物質の吸入した経験があり(ほとんどはタバコ)しかも気管支が狭いところがあり、歩いたりすると息ぎれが出てきます。欧米でも日本でも年々増加傾向にあります。
喫煙する人の全部がなるわけではなく、症状が出るほどひどくなる人は喫煙者の1〜2割ぐらいの人です。
「あれ、タバコって意外と害ないじゃん。」なんて思わないでくださいね。また別のところでお話しする機会があると思いますが、タバコはボク達が体内に入れている最強の発癌物質です。中国の農薬なんてそばにも寄れません。もしも、これらが缶詰に入っていたら犯罪になります。それに狭心症や心筋梗塞の危険因子にもなっています。

胸部レントゲンでは肺は大きく過膨張しています。横隔膜は下に押しやられ、心臓までもが膨張した肺に押されて小さくなります。下のレントゲンは左肺が全部写っていなくて、いい写真ではありませんが、「なるほど縦に長い肺だな」と分かってくれたらいいのです。COPDについてはあとでまた詳しく述べます。なお、下の写真は左側が切れていて、いいレントゲン写真とはいえません。本来なら取り直しです。

2)特発性間質性肺炎(肺線維症)・・・原因不明の肺が硬くなる病気です。若い人には少なくだいたいが50歳過ぎてからかかります。肝臓が繊維化して硬くなる病気は肝硬変といいますが、肺の場合は肺硬変とはいわないで、肺線維症といいます。間質性肺炎のすべてが特発性ではなく、中には原因の分かる病気もあります。たとば、予後の割といい疾患に入るものとして、鉄肺症(鉄の熔接や研摩に何年も従事したとか)や慢性の好酸球性肺炎とか、慢性の過敏性肺炎なども間質性肺炎になります。すべてが予後の悪い疾患ばかりではありません。逆に発症後3ヶ月とか4ヶ月で死亡するような予後の悪い間質性肺炎もあります。でも、統計的に最も多いのが原因が不明の特発性間質性肺炎です。症状が出てからおよそ5年の生命予後です。

3)肺結核後遺症・・・年々この病気で在宅酸素の方は減っていますが、残念ながら今でもかなりの数の方が昔の胸郭形成術という、今から見ると荒っぽい手術のせいで低肺機能になっています。下の写真の方は80歳の男性で右の下で肺炎を起こしています。両方の肺の上方がつぶれているのがおわかりでしょうか?

4)気管支拡張症・・・中小の気管支の異常拡張がみられる状態です。多くは副鼻腔炎も合併していることが多い。両肺の広い範囲で広がっているものは、大抵副鼻腔炎が合併していて、毎日の痰の量もかなり多い。部分的な気管支拡張症は感染後の成長障害とか長期感染による気管支の変形によるものと考えられています。しばしば血痰・喀血がみられます。
慢性期はエリスロマイシンやクラリス路マイシンなどのマクロライドの少量長期投与が有効です。
びまん性反細気管支炎もよく似た病態で、昔は進行性で予後が不良でしたが、現在ではマクロライドの少量長期投与が有効とされていて、生命予後もずいぶん良くなっています。治癒する方も出てきています。

その他、肺癌や珍しい肺の病気で酸素を必要とする方もおられますが割愛します